2009年11月8日日曜日

日本アクチュアリー会年次大会でパネル発表


既にこのブログでも案内済みであったが、平成21年11月5日(木)・6日(金)と日本アクチュアリー会の年次大会が、経団連会館と東京ステーションコンフェレンスで成功裏に開催された。私が国際関係委員会委員長としてオーガナイザーを務めたセッションは、二日目の11月6日の9:30から11:45まで第2会場の503会議室で開催された。プログラムには、次の通り記載されている。

パネルディスカッション(9:30~11:45)
国際関係委員会「The Day after Tomorrow for Insurers」
オーガナイザー あらた監査法人 吉田 英幸 君
パネリスト PWC Bryan Joseph 氏
ミューニック・リー Gavin Maistry 氏
ミリマンインク 猪野 力弥 君
ハノーバー・リー 野上 憲一 君
要旨】
米国のモーゲージ・ファイナンス市場の片隅から発した世界金融危機は、グローバル金融システム全体の基盤を脅かすに至った。その影響は、保険・年金業界を含むすべての業界に及び、アクチュアリーの将来の業務にも大きな変化をもたらすであろう。「The Day After Tomorrow for Insurers」のパネルでは、(1)規制、リスク・マネジメントと財務報告、(2)資本の配分と活用(モデルの開発と限界)、(3)この金融危機の勝利者は、どのような組織か、また、西洋から東洋への経済的・政治的パワーシフトが世界経済にどのような影響を与えるかにつき、海外のアクチュアリー2名から基調講演いただき、その後に国際関係委員会のMCEV部会、ERM部会、及び商品開発部会からアクチュアリーの技術的視点での影響分析と将来予測を議論する


実際の発表の順番は、外人については通訳をつけて、まずBryan Joseph 氏が、The Day after Tomorrow for Insurersの発表をした。内容は、今回の金融危機の発生の原点に立ち返り、銀行・保険業界の受けたインパクトの大きさ、規制の強化の方向性、そして保険に関するアクチュアリーのモデルの限界を理解する必要性、そして、最期に、G8からG20へのパワーシフト、あるいは西欧からイーストへの経済的・政治的パワーシフトが起こったことの今後の世界マクロ経済への影響の重要性的の話をいただいた。政権交代が起こった日本の今後の世界のパワーバランスの変化の中での舵取りにも大変重要な意味をもつことかと思われる。また、気候変動の影響、危険と機会の分析にも言及し、世界は複雑興味深い時代に入りアクチュアリーは引き続き革新的にフィナンシャルな側面を中心に重要な役割を果たしていけるであろうと締めくくった。2番目のスピーカーの、Gavin Maistry 氏は、「金融危機後のリスク管理」について、Munich Re社の例を使って説明いただいた。世界でトップクラスにあるミュンヘン再保険会社のケーススタディを大変興味深く伺うことができた。これから言えることは、過去の危機(2002年-2003年)を契機としたリスクマネジメントに対する取り組みが今般の金融危機に生かされたということではないかと思える。外人の後は、三つの委員会の部会からの発表で、まずはフィナンシャル・レポーティング部会から猪野 力弥さんが、MCEVの最新の状況を発表いただいた。MCEV原則はEVの比較可能性を高めることを一つの重要な目的として導入されたが、金融危機の影響によりEV開示会社はそれぞれ異なる前提を使用するようになり、EV原則はその修正を余儀なくされた。2009年10月にMCEV原則の改訂版が公表されたが、これで十分なものとは言い難く、今後も継続して検討すべき課題が多いようである。また、検討中のソルベンシーⅡやIFRSとの整合性も今後の大きな課題である。その次に、ERM Webinar部会を代表して、私のほうから昨年の12月に実施された、世界同時中継のERMのインターネット・ウェブセミナーの内容を、アジア・パシフィック、アメリカ、ヨーロッパの三つのリージョンにつき、それぞれ、1.Market-Consistent Risk Management、2.Does ERM Need an Economic Capital Model、3. The Pros and Cons of Economic Capital Models vs. Stress Testingとして、9つのコマで要旨を説明した。金融危機との関係に言及したものは、以外に少なかったようであるが、例えばShuen Liuのペーパーが参考になると思う。すべての発表の全訳は、年度末には会報別冊に出版の予定であるので、是非、そちらを参考にしていただければと思う。今年も同様な企画を12月1日に予定している。最後に商品部会のリーダーの野上 憲一 さんから「金融危機による生命保険商品への影響」についてお話をいただいた。中国、米国の最新状況をはじめ、独自の視点での報告をいただき興味深かった。今回の金融危機は100年に一度の特殊なケースと捉えるか、あるいは今後も起こりうると捉えるかで、商品面の対応が180度異なってくるように思えると示唆されたが、その意味で、考えさせる報告ではなかったかと思う。
いずれの発表のスライドもアクチュアリー会の大会専用のホームページにアップロードされているので、興味のある方は、是非、ダウンロードして読まれることをお勧めする。それにしても、大会期間は営業回りもあり、非常に忙しかった。今週は11月11日からIAAのHyderabad会議で出張なので、頭をそちらに切り替えて準備を進めている・

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