2009年3月14日土曜日

London出張 ヨーロッパのERMの現状を聞く



3月11日から今週は、ロンドンに滞在している。目的は、会社のPwCのアクチュアリーのチームを訪問して情報交換することと、現地開催のERMセミナーの討論に参加することである。英国とヨーロッパからの参加者が多く、日本人は私一人であった。内容は、盛りだくさんであり、英国の金融庁FSAや保険協会(ABI)のソルベンシーII導入に向けての内部モデル(Internal Model)の承認手続きの詳細が示された。SOXの時と同様にドライラン(Dry Run)を事前に実施し、準備期間に第一次検証を実施する模様だ。Use Testなど、監査法人のアクチュアリーの役割が重要になると予想される。基本的に、ヨーロッパ会社は、MCEVも導入中または完了しており、インフラのかなりが構築されているので、IFRS PhaseII同様にソルベンシーII導入に向けての抵抗は全く感じられなかった。むしろ今回の金融危機で、ERMによるリスク管理の重要性がいかに大切であるかを認識し、ヨーロッパ全体で英知を結集して取り組む意気込みが感じられた。ファクター方式による標準モデルは、マネジメントの考えでは、(Simply it cannot be acceptable for global firm)ということであり、アリアンツのような大手は勿論、ほとんどの会社が内部モデルを目指しているようである。無論、モデル議論がすべてではなく、企業文化の中にいかにエコノミックキャピタルや、資本配分、リスク対収益認識方式を浸透させるかの論点も重要であり、全員が企業のトップ(CEO)とCRO、CFO、ALM委員会、ALM実行委員会などのトップダウン・メカニズムの重要性を指摘していた。それにしても、デターマネジメント、キャッシュフローシステム、経済シナリオジェネレーター、リスク計測と統合システム、資本管理システム等が絶妙に相互連携して巨大なインフラになっている。日本は、QIS3,4の標準モデルの試行は実施しているが、まだほとんどの生保が、内部モデル(確率論的手法と複製ポートフォリオ)は未着手かと想像する。ヨーロッパに遅れること、4年位というのが実感である。やはり、英国およびヨーロッパ域内で、SolvencyIIやMCEV原則等の、ERM周辺の法的整備が進んでいるのがドライバーになっていると思われる。

2009年3月8日日曜日

Cape Town 国際アクチュアリー大会へあと一年

 ICA 2010が南アフリカのケープタウンで2010年の3月7日から12日まで開催される。詳しい情報は、次のWebsiteにある。http://www.ica2010.com/
4年前の前回のパリ大会に引き続き、数千人の世界中のアクチュアリーが参加して、色々な発表をされるであろう。今回は、IAAの各Sectionごとのトラックがメインになっているようで、個人での投稿はあまりないのかもしれない。私が議長を務めるIACA(コンサルティング)Sectionでも、現地の委員のMike Codronを中心に準備を進めてもらっているが、発表者の募集、適切なテーマの選定、他のSectionとのジョイントのプログラムのための調整など、これからやらなければならないことは沢山ある。私の任期は、Boston大会で就任してから2年間なので、この国際会議までを何とか務められれば、無事にPast Chairmanになり肩の荷を降ろせる。今年は、国際会議の多い年で、PBSS(IAAの年金・社会保障セクション)の大会が10月4日から6日まで、日本年金数理人会の20周年を記念して東京で開催される。Websiteは、次のとおりである。
http://4thpbsstokyo.visitors.jp/ また、その直後にアジア地域のアクチュアリーの大会のEAAC会議が、韓国のソウルで開催される予定である。いずれも、IACAのセッションが用意されているので、スピーカの募集などを準備中である。保険のテーマとしては、やはり、最も注目されているのは、IFRS やSolvencyIIやMCEV等であろう。IFRSは、いよいよ日本もアドプションに向けて全産業が急ピッチで動き始めた。保険業界も、一部の会社は、監査法人等をアドバイザーに雇って、全面移行を開始したところもあるようだ。今年の12月には、Exposure Draftが出る予定なので、10年以上かかった保険IFRSもいよいよ収斂に向っていくのだろうか。私自身も、コンサルタントとしてこの分野で講師として話す場合も多く、2月には大阪に出張して、ある企業に講演をした。また、先週は、MCEVについてセミナーの講師をした。IACAでは、アジア地域でのコンサルティング協会設置の電話会議を実施し、委員各位の意見を聞いた。また、米国アクチュアリー会からは、ERM Webinarを今年度も実施したいとの連絡があった。ERMについては、情報収集に今週の水曜日から、ロンドンに出張する予定である。やはり、先行しているヨーロッパ会社の実例を聞くことは、重要と思われる。